かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう

僕は写真が下手なんだと思う。

まず落ち着きがない。

これは仕事なんだとか、お金をもらっているからとか、プロだとか、作品だとか。それらは全て、写真を撮る上では雑念。そんなだから、ちゃんとひとを見ているのかでさえ、時折僕自身疑問に思う。

そもそも、ちゃんとひとを見るとは、どういうことなのだろう?

かつて写真を撮ったひとから「あなたは私の何を知っているんですか?」と言われたことがある。もちろん抗議された訳なのだけれど、これは僕にとって褒め言葉だと思った。

「あなたは私の何を知っているんですか?」

そう。
僕は「あなた」のことを知らない。
僕が「あなた」を知るはずがない。

たとえ一緒に笑っても、一緒に食しても、一緒に寝ても、セックスをしても、僕があなたを知れる訳ではない。

唯一、僕が知っていること。

それは「僕はあなたを知らない」ということを知っていることだ。

それが僕の持っている能力であり、
それが僕の写真。

「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」

朝起きたら頭にあった言葉。
これはミュージシャンの早川義夫さんが1969年に出したファーストソロアルバムのタイトル。

自分の真理。それは一生掛けて見つけていくもの。もしも僕がすでに見つけられているのなら、この世にいる意味はないだろう。ましてや、人様のに至っては、いくら頑張ってもせいぜい小さな穴から、ある一面が見える程度。カメラ持ってヒョイっと登場して写るわけがな...